2018年8月25日(土)開催の「映像制作レクチャー」当日の様子です。
是非ご覧ください。
CMディレクター、映像作家として、長きにわたり第一線で活躍。
また、日本でもっとも早く「Web動画」に着目し、この分野を切り開いてきたパイオニア。
欧米仕込みの「動画ダイレクトマーケティング手法」で、数々の商品を爆発的ヒットに導く。
「話題になった動画」の制作実績多数。「感動動画」と呼ばれるジャンルでも、数々のヒット作を生む。
現在は、映像制作のみならず、舞台演出や写真展の開催、書籍の執筆、講演活動など、幅広い分野で活躍中。
株式会社アーツテック
https://www.artstech.net/
今回は映像制作に関する基礎的な知識から実践編として撮影~編集までをレクチャーとして行いましたが、お伝えした内容はほんの一部です。
映像制作は敷居が高いと感じられるかも知れませんが、いまやスマートフォンひとつで動画の撮影・編集もできるようになっています。
今回のレクチャー内容を参考にし、自分たちが表現したい映像ができるようになっていただければと思います。
CMや動画などの映像作品には、いろいろな表現形式があるので、酒井先生の作品を事例に説明いただきました。
本日の講義は以下の全体の流れに沿ってお話しします。
プロットからはじまり、シナリオ、絵コンテにいたるまで作品事例をもとに説明いただきました。
・ログラインづくり 想像(創造)力に働きかける作品全体の羅針盤
「ログライン」
「Aな主人公が、Bに出会って◯◯する話」
<例>
「父の気持ち」
娘の子供を引き取ることになった静夫が、かつて家出した娘を許し、
一緒に生きていくことを誓う物語。
・プロットづくり「ログラインを膨らませたもの」
<例>
「父の気持ち」
無口で寡黙な静夫。
娘の優奈が、高校生で妊娠し、家を出てしまう。
やがて妻は死に、娘は離婚して子供を連れて帰ってくる。
娘の子ー亮太郎を引き取ることになった静夫。
思いもかけず、亮太郎に対し、愛情が湧いてくる静夫。
夜、書斎で机に向かっていると、
かつて家出した娘の幼き頃を思い出す。
しかし、妻が亡くなった時も、連絡ひとつしなかった娘を
許すことができない。
しばらくして、娘は子供を引き取りにくる。
泣きながら抱き合う母子。
父は、瞬間に娘のすべてを許す。
そして、家族3人で一緒に生きていこうと伝える。
・脚本
番号がついている部分は「柱」と言われ、「シーン」ともよく言われます。
ここでは「シーン4 家玄関」ということになります。
シーンとカットの違いは、このシーンの「家玄関」の中で、いくつかカットを割って撮っていきますが、その大きいくくりがシーンになります。
そしてそれよりも少し小さいくだりがカットとなります。
次にセリフです。
亮太郎「ただいま」
静夫「おう、おかえり」
亮太郎「おじいちゃん、今日はカレー?」
これがセリフです。
あと、もう一つここに入ってくるのが「ト書き」と言われ、情景を描写しているものです。
「台所に走って入ってくる亮太郎」と書かれている部分です。
基本的に台本は「カット」、「シーン」、「ト書き」3つで構成されています。
・ストーリーボード
本来は、映像の中身は監督が分かっていればいいのですが、
それだけでは周りのスタッフが「何の画をどうしたいのか」が分かりません。
スタッフの意思統一を図るためにストーリーに沿った絵コンテを書いていきます。
どこに誰が立っていて、何をしているのかを書きます。基本的には左に書いているのが「ト書き」と言われる情景描写です。
ここではブランコに乗っている女の子がいますが、
「このブランコに乗る〇〇」や「その前を横切る幸せそうな親子」などどういった画になるかが分かるように書きます。
右側には「セリフ」やその時に入ってくる「モノローグ」「心の声」や「ナレーション」などどのコマにどういう言葉が当たっているのかが分かるように音声を書きます。
スタッフ構成、出演者の選定、撮影場所の選定、美術、衣装などの準備、香盤表の書き方など実例を通して説明いただきました。
主要なスタッフは、ここに書いてあるものが基本です。
場合によっては兼ねてやる場合も多いです。
監督、補佐をする助監督、撮影、場合によっては撮影の助手。
照明、場合によってはその照明の助手もいます。
音を撮る人、美術、衣装、ヘアメイク、そしてドラマでは記録というポジションもあります。
これらがクリエイティブに直接関わるスタッフです。
もう一つは撮影を円滑に進める為のスタッフで、
いわゆるプロデューサー、制作スタッフと言われる人たちです。
クリエイティブに直接関わるスタッフ
撮影を円滑に進めるためのスタッフ
※監督とプロデューサーの違い
プロデューサーは映像の総責任者で、その中身を作るのが監督です。
映画の世界でのプロデューサーは作品を売る為の最高責任者なので、どんなに作品が良くても売れなくてはいけません。そして、その中身の責任者を請け負うのが監督やディレクターです。このように役割が違います。
役柄に合った役者を選出、ストーリーに沿ってキャスティングを行います。
キャスティングは誰に出演してもらうかを決めます。
内容に従って誰が良いのか、女性なのか男性なのか、年代はどういう人なのかそういったことを考えて、役柄に合った役者、俳優さん、女優さん、モデルさんいわゆる演者と呼ばれる方をキャスティングします。
プロの現場ではオーディションを行い、主要なスタッフでロケハンに行って、準備を行い撮影に入ります。撮影後は編集を行い、チェック作業、いわゆる初号試写をします。
初号試写でこれは物語として成立しているのかを一度確認します。
「こういうシーンがないと意味が分からないな」となったらそこからもう一回撮影をします。ここでは調整と書いてある部分です。追加撮影が必要な場合はここで撮影をします。
その後、第一試写という初号試写の次の試写があり、最後に音楽等々付けるという工程を経て、納品するという流れになります。このスケジュールを、撮影の日だけでさらに細かく組んだものが右側にあります。これは「香盤表」と呼ばれ、当日のタイムスケジュールです。
動画というのは撮りやすい順番から行くことが基本です。必ずしも編集、コンテ順ではなく、一番早く終わるものからどんどん上げていくというのが基本になります。
POINT!
公園などは役所、道路は警察、ビル周辺だったらそのビルの管轄などに許可申請を出す必要があります。(場合によっては、料金が発生します)
また、地域周辺への気配り、迷惑がかからない場所か、など配慮が必要です。
1. 撮影場所の図面を作成します。
2. 状況がわかる写真を撮ります。
日の回り(東西南北)を確かめます。
日の出、日の入り、干潮、満潮(海や川の場合)をチェックします。
内容に沿って撮影場所の選定をしていきます。公園や道路では許可が必要になることが多いので確認をします。場合によっては料金が発生してしまう場所もあるので、十分気を付けてください。また、住宅街で撮影するときは地域周辺への気配りが非常に重要になります。
ロケハンでは必ず撮影場所の図面や状況が分かる写真を撮ります。実際の構図で撮影するだけでなく、その周りにどういうものがあるのかも確認し、日の周り、東西南北を必ず確かめます。
明るさ、視写界深度(ぼけぐあい)を決めます。
色を決めます。
イマジナリーラインとは、対話者2人の間を結ぶ仮想の線であり、その線を基軸にどちらか片方に半円(180度)を描き、そのエリア内にのみカメラをポジショニングし撮影する原則の一つです。
イマジナリーラインは超えて撮影しないというのが基本で、イマジナリーラインを気にせず線を越えて撮影した場合、各人物が右や左に瞬間移動してしまい、観る側にとってはその都度、頭のなかでわざわざ構図を整理しなければならず混乱してしまいます。
越えてはならないと言っても、物語中で人物の位置が入れ替わることは頻繁にあり、一般的な方法は、カメラが移動するか、登場人物が移動する、もしくは異なる種類のカットを挟む方法(たとえば第三者の登場等)などです。
ラインを越えて撮影する場合でも、やはり”視聴者にとっての見やすさ”を意識することが重要といえるでしょう。
動画の内容をしっかり伝えるためには視聴者が映像の構図で混乱することなく、その動画の内容自体に集中できるようにするために、イマジナリーラインを意識し撮影を行うことが大切です。
出演者に関しては事前に出演に関する許諾を得るようしましょう。
口頭でもかまいませんが、可能であれば作品名、内容、用途などを記載した資料を用意し、
出演者本人にサインしてもらうなど簡易なものでOKなので文面で残すとトラブルの回避ができます。
公園によっては使用料が発生する場合や撮影が禁止されている場合もあります。
撮影予定の公園の管理者に事前に確認しましょう。
道路(歩道を含む)には公道と私道があります。公道には高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道があります。
道路(歩道)での撮影に関しては役所の道路を管理する課、所轄の警察に道路使用許可を申請する必要があります。
撮影する自治体、や警察署に事前に確認してください。
商業施設の敷地内での撮影の場合は、施設の管理会社へ申請をしてください。
バス、電車など公共交通機関での撮影に関しては、駅内、ホーム、電車、バス内での撮影はなど各鉄道、バス会社への申請となります。
許諾を得た出演者以外の人物がクローズアップで映るのであれば、その人物すべてに対し許可を取る必要があります。
「容貌、姿態」は個人を特定できる「個人情報」の一部ですので「あとで顔をぼかせばOK」と軽く考えず、撮影すること自体がNGと考えてください。
「撮影した風景の一部としてたまたま映りこんだ」「不特定多数の姿を全体的に映した」などの場合は例外となりますが、
やはり映された側の気持ちに配慮するのであれば、個人を特定できないよう撮影するのがよいでしょう。
ロケハンでは撮影できそうと思った場所が、撮影する時間帯や日程によって、
イベントがある日程だった、混雑する時間だったなど、ロケ場所の選定には時間的な余裕を持って準備をした方がいいでしょう。
申請時に企画書やシナリオ、画コンテの提出を求められることもありますので、
申請手続き方法や必要な期間だけでなく準備物についても事前に確認しましょう。
安易に手持ちの音楽CDやネット配信されている音源を使用すると、その音楽(楽曲や歌詞)の著作権者が有する複製権その他の「著作権の侵害」や、歌手・演奏者やレコード(音源)製作者が有する「著作隣接権の侵害」となります。
可能であればオリジナル制作の楽曲か音楽のフリー素材(著作権フリーとされている音源)を使用するようにしましょう。
「TOHOKU LOVE 2018 GAKUSEI MOVIE CONTEST」 ではロイヤリティフリー音源素材も用意しています。
様々なジャンルから選べるロイヤリティフリー音源素材となっていますので安心して使用可能です。
音源提供: 123RF
実践編では実際にフィールドへ出て、講師の先生から直接カメラの操作方法、アングル、出演者の演出など撮影に関するアドバイスをいただきながら一眼レフカメラやスマートフォンのムービー機能を使って実際に撮影を行いました。
参加の学生さんたちは、各自の題材を映像でいかに表現するか、それぞれストーリーを考えながら、撮影をしていました。
実践編で撮影した撮影素材の取り込み、カット編集、テロップ入れなど実際に編集ソフトを使用してのレクチャーでした。
編集方法のポイントの他、スマートフォンを使った撮影データでも編集ソフトで作業することで本格的な映像が制作できる事も学ぶことができたようです。参加者からは、「映像制作について基礎から学べて大変勉強になった。」という感想が多く寄せられました。
学生のみなさん、作品のご応募お待ちしております。